11月11日。
この1の並んだ日は韓国では『ペペロデー』と名付けられている。
(ペペロとはポッキーに思いっきり似ているお菓子。その模様が1111に似ていることがはじまり)
比較的新しいイベントなので、国民的に支持されているわけでもないのだが、
若者を中心にペペロをあげたりもらったりする迷惑なイベントとして定着しつつある。
ペペロには愛だけでなく友情が含まれているところがそれなりに気が利いているとは言えるのだが、
考えようによってはバレンタインデーのチョコはハナから諦めているけど、ペペロすらもらえない…
という自己嫌悪一直線になる人も続出するあたり、かなり残酷なイベントではある。
ちなみに日本は漢字で『十一十一』というわけで乾電池の日で、
愛する人に真心を込めて乾電池を送る日となっているとかいないとか(´゚ c_,゚`)
さて、クリスマスに破れ、バレンタインデーに散り、秋夕でちょっと幸せを感じ、さあペペロデー。
話は雑誌のインタビューから。
けっこう雑誌などのインタビューには積極的に出させてもらっている生意気な私。
人気者サイミニ(というネット上で有名な人がいる)曰く
「コーヒー1杯おごられるだけで時間の無駄だし、しかも記事を見ると話した内容とは違うし
あんなの雑誌側にだけ良いことばかりで、私には何の役にも立たないから基本的には受けない」とのこと。
いつも温和で何かを悪く言うことのない彼女がこれだけ言うということは、
過去に何か嫌なことでもあったんだろうか、とも思った。
でも俺としては、定期的に何かをするのは面倒だけど、一回だけで終わるというのが結構魅力だし
いつまで生きるかわからないけど、今以上に人の前に出ることなんて将来ないと思うし、
今できることをやっておきたいな、ということから全てのインタビューの依頼にヽ(*´∀`*)ノ
OKです! してきた。
ほら、DNA的にもこういうの嫌いじゃないし。もちろん今までも嫌な経験もしてないし。
それに世界一のインスタントドリンクの値段の高さを誇る韓国の喫茶店に行く機会など
こんなことでもなければないじゃないか。と至極積極受け入れのスタンスなのです。
と…ここでふたつの裏事情。
結論から言うと、なんか気軽にインタビューとか言っちゃってるけど
とにかく自信を持って俺が有名だったりすごかったりするわけじゃない。
こんなこと言ったら失礼かもしれないけど、雑誌社だってインタビューする人が不足してるだけの話。
そりゃ、毎週とか毎月インタビューする人のを探すのも一苦労なんだと思う。
で、そっち方面で働いている人は他の雑誌も目を通すらしく…
そこである雑誌に出てる韓国に住んでいる外国人の俺を見て
「へぇこんな人がいるんかい。ふーん日本人で、まあ韓国語もそこそこできるみたいだし…」と。
それじゃ、人もいないしたまには外国人も面白いか。私達の方でもこの人に連絡してみよう。
と、こういう流れで、一度雑誌に載ると似たような他の雑誌から連絡が来る傾向があるのだ。
そしてさらにもう一つ。
誰とは言わないけど…!
俺の知っている某キムさんは雑誌の懸賞ハガキを送っている。
もちろんただ出しただけじゃ当たらない確率の方が高い。
そこで「こんな日本人がいますよ~。インタビューしたら面白そうですよ~」と、こう書くわけだ。
すると「お。インタビューする人を探してたんだよね~ ありがたい情報サンキュ!」と懸賞当選。
と、この2つの連鎖反応によって、敷かれたレールの上を滑るだけの俺。
何月号とかは覚えていないけど、韓国に来てから…
「B. I. K」 20代ぐらいの男性雑誌
「PAPER」 若者雑誌
「WITH」 女性ファッション雑誌
「LEMON TREE」 おばさんファッション雑誌
「SINGLES」 女性ファッション雑誌
「elleGIRL」 若い女性雑誌
「PCサラン」 コンピューター雑誌
「Digital Catch」 デジカメ雑誌
「週刊朝鮮」 怖い雑誌
「朝鮮日報」 ギャグ新聞
あとは思い出せないけど、このようなメディアにお世話になりました。
振り返ってみると特例を除くと基本的に「若者」「ファッション」「デジタル」路線ですよね。
さて、今回。
光栄なことに創刊号|*´ω`*|ゞ
で、その雑誌名が…
月刊廃人
ええええええ(´;゚;Д;゚;)ー!!!
なんだそりゃ。
「月刊廃人」って…(廃人は韓国語では「引きこもり」に近いニュアンス)
廃人レポートとか、廃人インタビューとかするのだろうか。
目が血走ったオタクさんが「いやぁ、もう50時間ぐらい寝てないなりよ。うにゅにゅ。」とか言っちゃうんだろうか。
おー、なんか楽しそうだ、と即「お願いしますヽ(*´∀`*)ノ」返信。
約束当日。
なぜか『月刊廃人』という自虐的でありながら排他的なその雰囲気を想像してドキドキしていた俺。
滅茶苦茶キーボード打つのが速くて、メガネかけて頭がボサボサで、話し声が小さくて
青と黄色のチェックのネルシャツを着たジーンズの短い人が来るんだろうか…。
今までは1人を除いて、全部女性だった。男性というだけでもなかなか気分が違う。
待ち合わせの夜11時直前に電話をするとちょっと可愛い声で
「お待ちしておりますぅ~」と。
俺も間もなく○○駅の3番出口、という約束の場所へ到着。
いる( ´゚,_」゚)
○○駅の3番出口、まさに出口で仁王立ちしている人がいる。
まるでテレクラで援助交際で待ち合わせしてるような雰囲気だ。
もっさいジャンバー姿のあのお方なんだろうか。
俺は女子高生になった気持ちで震える手で電話をしてみた。
どこかで聞いたことのあるポップでキュートなメロディが鳴り出すのと同時に
例の男性は腰につけた携帯専用のケースから慌しく妙に小さい電話を取り出すや
右肩を激しく上げながら
「ヨ、ヨボセヨッ!」と。
彼だ。
会釈をしながら近寄ると、かわいらしい満面の笑みで出迎えてくれた。
喫茶店へ。俺は「コーヒー。ブラックで」とか渋い男を演じることさえもできないので
いつものように遠慮なく650円もする、バイトが嫌がる注文ナンバーワンのフルーツパフェを注文。
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ていうか、全然関係ないけど…フルーツパフェにトマトが入ってるあたり、やっぱり韓国。
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で、彼。…彼というのも失礼なので仮名で本名のユンさんとしよう。
ユンさんは「日本大好き」を自称していることはメールのやり取りの中で言っていたこと。
で、会うや否や「信じてもらえないかもしれないから」
と日本語学科在籍中であることを証明すべく学生証を見せてくれた_| ̄|○
そして「モーニング娘。」のファンだということも同時に教えてくれた。
とりあえず誰のファンかは聞かないでおいた。
そんなユンさんと、夜中に一人でモーニング娘。の『そうだ!We're ALIVE』を繰り返して聞いて
日々の元気を出している全身ユニクロルックの俺、27歳。
という2人による廃人の小さな集い。
確実にイタイ。
こんな感じでごっついカメラを構えて、しかも男二人で写真を撮り合っていれば店内の視線も集めるだろう。
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とかなんとか言いながらも…普通に話してて楽しかった。
けっこうインタビューする人の中に美人のお嬢さんとか、面白い人もいたりするんだけど…
確実に今までで一番リラックスできる雰囲気。
廃人の波長があるんだろうか…なんて思っていると、大切なことに気づいた。
ペペロデー( ´゚,_」゚)
数十分前にたまたまこの話をしていたので、頭に残っていた。
意外にイベント好きなので、こういうのは無視できない性格だったりする。
で、発見…
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_| ̄|○
いくらかわいいウエイトレスバイトの子にもらったと思おうとしても…
目の前のモー娘ファン。おそらくは加護愛ファン(31歳)にもらった気分になるという呪縛から逃れることはできない。
2004年の、いや人生初のプレゼントとしての記念すべきペペロは廃人の集いにて。アリガトゴジャイマス。
さらに「もう少し写真を…」と店内の客がいないところへ移動して撮影開始。
ウエイトレスのバイトの子2人も「写真撮られてるあいつ誰だよ」みたいな厳しい目で見ている。
耳をかっぽじってよく聞いていると「あまり」「変な」「勘違い」とか否定的な言葉ばかり聞こえてきて申し訳なくなる。
だいたい基本的には一人でいるのが好きな廃人気質の内向的な人間としては、写真を撮られるのが苦手で、
というか、カメラ相手にヨン様みたいに爽やかに笑ったりできない。
写真を撮られている姿を誰かが見てるという事実が恥ずかしくて恥ずかしくて。
挙句に30間近の男2人で写真撮影。暗い店内でフラッシュバンバン光らせて;;
店の奥ではまさに手のひらで口を隠して「ヒソヒソ」ってしながら見て見ぬふりをする若い女性客。

10分が過ぎようとするころ、ユンさん愛用のD70のバッテリー切れが合図となり撮影は終了。
お勘定を済ませたユンさんが店を出たのに続こうとする俺の背中に
嘘っぽい不自然な二重まぶたのウエイトレスさんから質問が飛んできた。
「あの~どこの雑誌ですか?」
「月刊…」
「月刊……?」
「…月刊廃人…です;;」
「え?」
え? じゃないですよ
「月刊廃人だっての!」
「…はぁ」
ウエイトレスはどこか腑に落ちないような顔で頷いた。
ま、そんなリアクションでしょうよ。
突然冬になったソウル。
夜中に吹く風は、いつもより一層寒かったよ。
廃人デビューまで約2週間